ものがたり vol.1ロックウェルの絵はがき

作業療法士で、
普段はケガのリハビリや認知症ケアに関わっています。
今は軌道に乗ってきましたが、
立ち上げ当初の認知症ケアチームでは色々と苦労があり、
チームが嫌で嫌で辞めたくて。

もう本当に仕事辞めたいなって思っていた時に、
先輩から一枚の絵はがきをもらったんです。

先輩からのメッセージを読み返す櫻井さん

はい。
先輩からのメッセージの裏にあったのは、
女の子がお医者さんに人形を診てもらっている絵でした。
ノーマン・ロックウェルの
「ドクター＆ドール」という作品だそうです。
女の子の心配する気持ちを察して、
親身になって診療しているようなこの一幕。
人形だから風邪をひくことも、
心臓の音もしないはずなのに。

認知症ケアに通じる部分があるというか、
患者さんと接する上で、
とても大切な事のように思いました。
それまでの自分だったら、
「あぁ、そうねそうね」
って簡単に受け流しちゃっていた場面でも、
この絵と同じように親身になって聞く事が、
同じ一人の人間として関わることが、
僕の仕事の原点なのかなって。
この絵が教えてくれているような気がしました。

そうです。
認知症ケアチームの最初の頃はとても大変でした。
サブリーダーをしていたのですが、
なかなか上手くいかなくて。
仕事を辞めたくなるほど悩んでいた時期に、
この絵はがきから自分のやるべきこと、
医療者として大切なことを見つけることができました。

あれから6年ほど経ちますが、
今でも認知症ケアチームでサブリーダーを続けています。
こうして続けていられるのも、
この絵と先輩のおかげかもしれません。

後輩を指導する上でも、
この絵が参考になっています。
教え方で言えば、
一方的ではなく、極力一緒になって考える。
患者さんだけでなくスタッフに対しても、
相手の言いたいことに耳を傾け、
「やりたい事があるなら一緒にやっていこう」
というスタンスで指導に取り組んでいます。
そんな指導じゃない
と思っている後輩がいるかもしれませんけれどね。