見学や実習に来てくださる皆さんから、研修場所に迷っているというお話をよく伺います。私もつい先日まで専門研修科で迷っていましたし、研修場所を決めるときにも多少は迷いがあったことを思い出します。進路というのは自分で決めるものですし、皆さんの参考になるとは思いませんが、自分と違う人の呟きが多少の刺激になるかもしれません。

私が相澤病院の存在を知ったのは中学生の時、神様のカルテという小説に出会った時です。相澤病院をモデルとするその小説が好きだったため、真っ先に研修先の候補に思い浮かびました。初期対応や救急を学びたいという真面目な理由も一応ありました。ただ自分の体力のなさには自信があったため、相澤病院でやっていけるだろうかという不安はかなりありました。それでも相澤病院で働きたいという気持ちが余裕で勝つくらいには、神様のカルテのファンでした。

そんなミーハー心でしたが研修させて頂けることになり、いざ働き始めてみると、体力的に疲れたり眠いなと思うことはあれど、仕事が本当に嫌になったことはありませんでした。ポジティブキャンペーンを張るつもりはないのですが、相澤病院で研修させていただけてよかったと偽りなく思います。それはなぜかというと一番は、心から尊敬できる先生方に出会えたからです。

研修開始当初の今より更に未熟な私は、当時の上級医に日々ご迷惑をおかけしていました。今となっては恥ずかしい限りですが、他の仕事を重要と思い込んで手技をすっぽかし怒られたこともありました。ある日はじめて病棟で担当患者さんをお看取りしました。私は動揺するだけで何もできず、感情を表出しないようにするだけで精一杯でした。それまで分かりやすく優しい、というイメージではなかった(すみません)先生の、非常に丁寧な手つきや言葉遣いを、今でもはっきり覚えていて、それからお看取りをする場面ではいつも必ず思い出します。ちなみに、手技が上手いということが患者さんにとってどういう意味を持つのかは、研修生活を経るごとに実感として身に染みてきたところです。

進路を決めるきっかけになったある上級医も、とくに手技に関しては厳しい先生でした。患者さんが亡くなった日の夜、沈んだ気分に任せて交流会を断ろうとした時も怒られました。確かに自分の気分で約束を反故にするのは違うなと反省しましたが、帰り道に先生に、毎度それではこの先やっていけないから、とさらりとお言葉をいただいたことは忘れません。もう長年臨床に携わっていらっしゃるにも関わらず、一人一人の患者さんの治療方針に悩み、勉強されている姿が段々と見えてきて、先生にもこれまで沢山の沈む夜があったのだと感じました。

自分の同期というのはみな変わっていて、まあ普通の人というのもいないでしょうが、近くで見ているせいなのかキャラが濃いなと感じます。進む診療科も多種多様です。ただ、それなりに忙しく時には一晩眠れなかったりする相澤病院の当直を共にやってきて、一緒に働きたくないと思う人は誰もいません。どんどん洗練されていくそれぞれの診療をみていて素直に尊敬の念を抱きますし、同時に焦りますし、自分も負けずに頑張ろうと思えます。

病院選びに迷った時、雰囲気や人が大事だよ、なんて言われませんでしたか?私は言われた記憶がありますし、短時間の見学で分かるわけがないでしょうとも思っていました。でも、患者さんも、そのご家族も、スタッフも、病院とは人と交わるところです。どの病院でも多くの出会いがあって、きっと多くの得るものがあるでしょう。私も、患者さんやコメディカルの方々に教えていただいたことが沢山あって・・・いや、このままだと病院選びには全く何の参考にもならない文章になってしまいそうです。これでは担当の方に怒られそうです。

相澤病院で研修させていただけて良かったと日々思うのは、自分もこんな医師になりたいと思える先生方に出会えたことです。心から憧れたり尊敬できたりする存在が近くにあるというのは、かなり得難いことだと思います。相澤病院にはかっこいい先生方が沢山働いていらっしゃいます。ご興味があればぜひ見学に来てくださいね。結局ポジティブキャンペーンを張りました。
私は来年からは信州大学に行きますが、相澤病院で教えていただいたことを忘れず、これからもミーハー心をもって頑張りたいと思います。

(記事:2年次研修医F)

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